平成30年度税制改正により、中小企業の代替わりを集中的に進めるための対応として適用要件が大幅に緩和された、事業承継税制の特例が創設され、現行の事業承継税制との選択適用が可能となりました。
この特例は、平成30年1月1日~平成39年12月31日までの10年間の贈与等により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。
現行制度(一般制度)と特例制度の主な相違点は次の通りです。
①対応株式・・・一般制度では発行済議決権株式総数の2/3、特例制度は全株
②相続時の猶予対象評価額・・・一般制度では80%、特例制度は100%
③雇用確保要件・・・一般制度では5年平均80%維持、特例制度は実質撤廃
④贈与等を行う者・・・一般制度では先代経営者のみ※、特例制度は複数株主
※一般制度につきましても、平成30年4月1日より、複数株主からの贈与が可能になっております。
⑤後継者・・・一般制度では後継経営者は1人のみ、特例制度は後継経営者は3人まで可能
⑥特例承継計画の提出・・・一般制度では提出は不要、特例制度は提出が必要
上記相違点の通り、特例制度の適用については、特例承継計画の提出が要件となっております。
この特例承継計画は、会社が認定経営革新等支援機関の指導・助言を受け作成したものを平成30年4月1日~平成35年3月31日までの間に都道府県の担当部局に提出しなければなりません。
この他にも、一般制度と特例制度には相違点があり、適用要件である特例承継計画も業種によりその提出先が異なるなど、個別の案件によりその取扱いが異なる箇所があります。当事務所は、認定経営革新等支援機関の認定を受けており、個別案件の対応、検討も可能ですので事業承継でお悩みの経営者の皆様のお力になれるかと思います。
損害賠償金には、所得税法上非課税となる損害賠償金と、収入金額に代わる性質を有するものとして、各種所得の収入金額となる損害賠償金の区分があります。
仮想通貨を預けていた仮想通貨交換業者が不正送信被害に遭い、預かった仮想通貨を返還することができなくなったとして、日本円により補償金を取得した場合の課税関係について国税庁よりタックスアンサーが公開されました。
タックスアンサーによりますと、一般的に、顧客から預かった仮想通貨を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった仮想通貨に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で仮想通貨を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得の課税の対象となります。
また、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの仮想通貨の価額がもともとの取得単価より低額であった場合については、雑所得の金額の計算上、損失が生じることとなりますので、その損失の金額は、他の雑所得の金額と通算することができます。
補償金の課税関係については、契約内容やその補償金の性質などを総合勘案しての判断となりますので、上記以外の課税関係が生ずることもありますので、ご注意ください。
競馬の馬券の払戻金については、一時所得として課税されており、外れ馬券の購入費用については必要経費(その収入を得るために支出した金額)に該当しないこととされていました。
しかし、競馬の馬券の払戻金が一時所得と雑所得のいずれかに該当するか、外れ馬券の購入費用が必要経費として控除することができるか、が争われた裁判において、
①最高裁平成29年12月15日判決では、馬券購入の態様や利益発生の状況等から雑所得に該当し、外れ馬券の購入は必要経費に該当する判決がされましたが、
②東京高裁平成28年9月29日判決(最高裁平成29年12月20日上告棄却)では、馬券購入の態様や利益発生の状況等から一時所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当しないと判断されました。
上記①、②の判決により、競馬の馬券の払戻金の所得区分については、馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮されて区分されることなります。 具体的には、馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき、年間を通じて収支で利益を得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、回収率が馬券の購入行為の期間総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合などには雑所得に該当し、外れ馬券の購入費用が必要経費に該当します。
なお、上記に該当しない一般の競馬愛好家の方については、従来通り一時所得として課税されますので、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当しません
所得区分の変更は、過去に遡って適用されますので、過去の所得税の申告の内容に異動が生じ、所得税が納めすぎになる場合には、更正の請求により、その納めすぎの所得税の還付を受けることができますが、法定申告期限から既に5年を経過している部分については、法令上還付を受けることができませんのでご注意ください。
また、国税庁ホームページでは、パブリックコメントを行った上で、所得税基本通達34-1の改正を行うことが明言されておりますので、改正等が行われた際には、当ホームページでも追加での情報を発信させていただきます。
平成29年分の所得税の確定申告の申告期限は平成30年3月15日までとなります。
個人の確定申告において、青色申告の承認を受けているか、白色申告であるかは、その個人の申告納税額に大きな影響を与えることとなります。
我が国の所得税は、1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告する申告制度が採用されています。収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成又は受領した書類を保存しておく必要があります。
青色申告の要件
その中でも青色申告は、一定の水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人について、所得金額の計算などにおいて有利な取り扱いを受けることができる制度のことです。青色申告の制度を利用することができる個人は、不動産所得・事業所得・山林所得がある個人で、納税地の所轄税務署長に青色申告承認申請書を提出し、その承認を受けた個人です。
青色申告の帳簿書類とその保存と特典
青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記の原則によること(一般的には複式簿記)が原則ですが、現金出納帳などの帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいとされています。
これらの帳簿及び書類は原則とし7年間保存することとされています。
青色申告の特典のひとつに青色申告特別控除というものがあります。
青色申告特別控除とは、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的に複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合には、これらの所得から最高65万円を控除する特典です。
それ以外の青色申告者については、不動産所得・事業所得及び山林所得を通じて最高10万円を控除する特典です。
その他にも、純損失の繰越と繰戻など有利な特典が多数与えられています。
白色申告の記帳・記録保存制度
白色申告者についても記帳制度や記録保存制度が設けられているため、青色申告でなくても記帳は必要となります。
記帳の対象となるのは、所得税の申告の有無に関わらす、事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方であり、記帳の内容は、売上などの収入金額、仕入れや経費に関する事項の、取引の年月日、相手方の名称、金額などで、一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法でもよいとされておりますが、法定帳簿の保存期間は7年間とされています。
所得の種類や規模により、作成・保存する帳簿書類は異なることとなりますので、ご注意ください。
節電効果や使用可能期間等の向上の観点から、自社の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプへ取り替えた際の処理について、お知らせします。
① 自社の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプへ交換する場合。
自社の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプへ取替え交換する場合の費用は、全額修繕費として処理することが相当です。これは蛍光灯型LEDランプは、照明設備(建物付属設備)がその効用を発揮するための1つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まった事で、建物付属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられるからです。
② 建物の天井のピットに装着された照明設備(建物付属設備)の改良と併せて蛍光灯型LEDランプへ取り替えた場合。
①の取替えは、照明設備の工事は特に行われていない前提であるため、照明設備本体の改良に併せて行われた蛍光灯型LEDランプへの取替えについては、資本的支出と考えられます。
③ 購入ではなくリースにより蛍光灯型LEDランプを交換した場合。
蛍光灯型LEDランプを所有権移転外リース取引により交換をした場合には、リース資産の所有権は移転していない等の理由から、修繕費として処理する事はできず、一般的なリース資産と同様に、「リース期間定額法」でリース期間に応じて償却限度額の計算をする事となります。さらに、蛍光灯型LEDランプをリース期間終了後、引き続き使用するために、そのリース資産を購入した場合の購入価格についても、修繕費として処理できず、法人が同じ資産の区分である他の償却資産に採用している方法に応じて償却限度額を計算する事となります。
取替えの方法によりその処理が異なり、損金化されるタイミングも異なるため、どの方法により取り替えを行うかは、ご検討ください。
平成29年12月14日、自民、公明両党が平成30年度税制改正大綱を決定しました。
その主な改正点についてお知らせします
法人課税関係では、生産性向上のための設備投資と、持続的な賃上げの後押しを要件に税額控除が認められる改正や、経営者の高齢化が急速する中、代替わりを促すため事業承継税制の抜本的な拡張などが盛り込まれています。
所得税関係では、平成32年1月からの施行とし、給与所得控除額、公的年金等控除額を10万円減額され、基礎控除の控除額が一律10万円引き上げとなりますが、合計所得金額が2400万円を超える個人については、所得金額に応じて控除額が逓減していき、2500万円超で基礎控除額が消滅する改正などがあります。
また、大法人について、法人税・消費税・地方法人二税の電子申告の義務化について明記されました。
その他にも、たばこ税の見直しなど多岐に渡る改正点があります。
平成30年度税制改正大綱による各改正点の、施行による具体的な変更点については、法改正が決定された後速報として、当ホームページにお知らせを掲載させていただきます。
福岡県内の全市町村では、給与所得者(従業員)の方々の納税の利便性の向上と税負担の公平性を図るために、個人住民税の特別徴収を徹底することとなっています。
個人住民税の特別徴収とは、所得税の源泉徴収と同様に給与の支払者である事業主が、従業員に毎月支払う給与から個人住民税を差し引き、納税義務者である従業員に代わって市町村へ納入する制度になっています。
所得税の源泉徴収義務者は、法令により特別徴収義務者として指定され、個人住民税を特別徴収することとなります。
原則として、全ての従業員が特別徴収の対象となりますが、次のいずれかに該当する方については、特別徴収をすることが困難であるとされ、普通徴収とすることができます。
A 退職者又は給与支払報告書を提出した年の5月31日までの退職予定者
B 給与の支払いがない月がある者
C 年間の給与の支払金額が930,000円以下である者
D 乙欄に該当する者
E 個人事業主の事業専従者
また、常時2人以下の家事使用人にのみ対して給与等の支払をする事業者は普通徴収を選択できることとされています。
上記A~Eに該当し、特別徴収をすることが困難な方については、事業主が市町村へ給与支払報告書を提出する際に、普通徴収申請書を提出し、かつ、その個人別明細書(市町村へ提出する源泉徴収票)の摘要欄にA~Eのいずれかに該当する旨の略号の記載が必要とされています。
普通徴収申請書による申請がない場合、A~Eに該当する場合であっても普通徴収とすることができなくなるため、今後の年末調整、給与支払報告書作成の業務の際には、ご注意ください。
法人の役員給与については、一定の給与でなければ損金の額に算入することができません。
損金の額に算入することができる役員給与は以下のとおりです。
①定期同額給与
②事前確定届出給与
③業績連動給与
①の定期同額給与とは、その支給時期が1ヵ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における総額での支給額が同額である給与とされていましたが、平成29年度税制改正の役員報酬の見直しにより、定期同額給与の範囲が拡充され、総額の支給額が同額のものだけでなく、
税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額(手取り額)が同額のものについても、定期同額給与として取り扱われることとなりました。
定期同額給与の金額の改定については一定の要件を満たすものでなければ、損金の額に算入することが出来なくなってしまう為、改正前の定期同額給与では、社会保険料の料率の変更時などは、金額に増減が出ておりましたが、今回の改正により同額の支給が可能となりました。
この改正は平成29年4月1日以後に支給又は交付に係る決議をする給与について適用されます。
ビットコインなどの仮想通貨は、近年、投資目的で運用する個人投資家が増え、市場が急速に拡大し利益を得る個人投資家もいる一方で、その税務上の取扱いについては明確でなく、判断が難しいケースもあるという問題点もありました。
そうした状況の中、今回国税庁よりタックスアンサーにて「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」が公表され、課税関係は以下の通りに整理されることなります。
①ビットコイン(仮想通貨)を使用したことにより生じた利益は所得税の課税対象となる。
②原則として、雑所得に区分され他の各種所得と合算され、総所得金額を構成し、超過累進税率(5%-45%)により課税される。
③ビットコイン(仮想通貨)を使用したことにより生じた損失については、損益通算は認められない。
また、平成29年7月1日以後のビットコイン(仮想通貨)の譲渡については、消費税は非課税として取扱われております。
課税関係は整理されることとなりましたが、個々の事案によりその所得区分等について、取扱いが異なることもありますので、ご注意下さい。
従来の所得税の確定申告の際、医療費控除の適用を受けようとする場合には、医療費の領収証又は医薬品購入費の領収証の添付又は提示が必要でした。
平成29年度の税制改正により、平成29年分の所得税の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合の医療費控除又はセルフメディケーション税制の適用については、従来の医療費の領収証又は医薬品購入費の領収証の添付又は提示に変えて、医療費の明細書又は医薬品購入費の明細書を確定申告書に添付しなければならないこととなりました。
改正後において、税務署長は、確定申告期限等から5年間、医療費の領収証又は医薬品購入費の領収証の提示又は提出を求めることができるとされ、税務署長よりその求めがあった場合には、納税者は求めに応じて、領収証の提示又は提出をしなければならないこととなっているため、医療費関係の領収証については、5年間の保存が必要となりました。
なお、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの所得税の確定申告については、改正前の医療費の領収証又は医薬品購入費の領収証の添付又は提示による、医療費控除又はセルフメディケーション税制の適用もできることとされています。
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