令和6年度税制改正大綱

新年あけましておめでとうございます。
令和6年度税制改正大綱が令和5年12月14日に自由民主党にて決定されました。
デフレ構造からの脱却で、賃上げ、民間投資の増加が今日本で動き出しています。この動きを止めることのないよう、中小企業にまで浸透するように社会を作っていくのがわが国が達成すべき政治課題です。
上記の現状認識から、

1.給与等の支給額が増加している場合の税額控除の見直し
 適用期限を3年延長するが、原則税額控除等を15%から10%に引き下げる。

2.交際費等の損金不算入制度の見直し
 ①損金不算入となる、交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を
  一人当たり5,000円から10,000円以下に引き上げる。
 ②接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を
  3年延長する。

3.生産性向上、供給力強化に向けた国内投資の促進
 ①イノベーションボックス税制の創設
  青色申告書を提出する法人が、令和7年4月1日から令和14年3月31日までの間に開始する
  各事業年度において、居住者もしくは内国法人に対する特定特許権等の譲渡又は
  他の者に貸し付けを行った場合に次の金額のうちいずれか少ない金額の30%に相当する金額がその事業年度の損金に算入できる。
   イ.特許権譲渡取引に係る所得の金額
   ロ.当期及び前期以前において生じた特許権譲渡に直接関連する研究開発費
   ハ.上記ロの金額に含まれる的確研究開発費の額の合計額

等、他にも大綱案が出ています。

免税事業者に支払う報酬等の源泉徴収

講演料、税理士、弁護士等の一定の報酬、料金等については、原則として消費税額等を含めた税込価格が源泉徴収の対象となります。
ただ、報酬等を請求する者が発行する請求書等に報酬等の「本体価格」と「消費税額等」が明確に区分されている場合は「本体価格」のみを源泉徴収の対象とすることができます。
インボイス制度下において、免税事業者に対して支払う報酬等の場合、報酬等を支払う者における仕入税額控除が経過措置期間に応じて異なっています。
最初の3年間は仕入税額相当額の80%、次の3年間は仕入税額相当額の50%が仕入税額控除の対象となりますが、6年間の経過措置終了後は仕入税額相当額の全額について仕入税額控除を行えなくなります。
法人税では、この経過措置を仕入税額控除対象外部消費税額20%を対価の額に含めることになります。
しかし、源泉徴収の対象となるのは仕入税額控除対象外部に関係なく、請求者から交付された請求書等に本体価格と消費税が明確に区分されていれば、請求書等に記載されている「本体価格」のみとなります。
例えば、免税事業者に報酬料金11,000円(税込)を支払い、経過措置の仕入税額80%を仕入税額控除の対象とする場合、
支払報酬  10,200  / 現金 11,000
仮払消費税   800  /
となりますが、源泉徴収の対象となるのは10,200円ではなく、10,000円に対して源泉徴収を行うことになります。
インボイス制度下でも取り扱いに変更はありません。

開示請求

申告書等閲覧サービスは「納税者が適正な申告等を行うため、過去に提出した申告書等を閲覧できるもの」です。申請手数料は無料で、納税者又は委任を受けた税理士等の代理人が所轄税務署の窓口で閲覧することができます。閲覧の対象は各税目の申告書や添付書類の他、申請書、届出書、報告書等があります。
閲覧は原則、書き写し、コピーはできませんが、収受日付印等を隠した上でスマホやデジカメ等での写真撮影をすることは可能となっています。
令和6年1月1日以後、令和5年度の相続税の改正により、暦年課税における相続前贈与の加算期間の延長が3年から7年、相続時精算課税での110万の基礎控除の導入等の見直しに伴い、相続等で財産を取得する者が行う開示請求事項が変更されました。

1.相続税関係の届出等の文書閲覧の例として
 ①相続時精算課税選択届出書
 ②借地権者の地位に変更がない旨の申出書
 ③申告期限後3年以内の分割見込書
 ④遺産が未分割であることについて、やむを得ない理由がある旨の承認申請書
 ⑤非上場株式等についての贈与税、相続税の納税猶予継続届出書

2.他の共同相続人が受けた贈与についての開示請求
 ①相続開始前3年以内の贈与
 ②相続開始前3年超~7年以内の贈与
 ③相続時精算課税の適用を受けた贈与

令和5年分路線価

国税庁は7月3日に令和5年分の路線価等を公表しました。
路線価もコロナ禍で低迷していましたが、地価が全国的に上昇したことに伴い27都市で上昇、13都市で横ばいの状況です。
県庁所在都市の最高路線価上昇は岡山市北区本町中心部で、多くの再開発が進んでいることが要因でした。
全国の最高は東京都中央区銀座5丁目で38年連続のトップです。
税務署別で最も上昇率が大きかったのは福岡・久留米署管内の久留米市東町で、高額の取引事例があったことによる上昇でした。
熊本・菊池署管内の菊陽町の上昇要因は、世界的な台湾の半導体メーカー「TSMC」の進出による影響です。
今後、福岡においても再開発が進んでおり、路線価上昇による相続税の影響が発生してくると予想されます。

令和6年1月以降のNISAについて

投資の内容は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2本になります。
年間の投資上限額はつみたて投資枠が120万、成長投資枠が240万、年間で360万までが投資可能額になっています。
一つの口座で同一年に併用することが可能となっています。
非課税枠は1,800万円が設定され、内 成長投資枠では1,200万が限度とされています。
注意として、限度額は簿価残高方式でいくので売却した年に再利用することはできないようになっています。
2本の枠の投資対象商品とは
1.「つみたて投資枠」:一定の公募等株式投資信託
2.「成長投資枠」:上場株式、公募株式投資信託で
 ①整理・監理銘柄
 ②信託期間20年未満の高レバレッジ型及び毎月配当型の投資信託等を除く商品
となっています。

インボイス制度の令和5年度税制改正

インボイス制度の令和5年度税制改正において「1万円未満の少額な売上値引き」等に関しては、原始証憑たるインボイスの発行が免除されます。
主に振込手数料等に関してですが、包括的には
①値引き ②割引き ③割戻し
の3つのパターンがあります。売り手負担の振込手数料が①に該当します。
参考として
条件
・決済すべき金額 100,000円
・振込手数料 1,100円(うち消費税額100円)
・買い手側は100,000円から振込手数料を差し引いて売り手側に支払った。
・売り手側は金融機関に対して振込手数料を負担する手続きは行っていない。

イ 従来の一般的な処理
・買い手側
買掛金  100,000円 / 現預金  100,000円

・売り手側
現預金   98,900円 / 売掛金  100,000円
振込手数料 1,000円
仮払消費税  100円

ロ 正式な処理(振込手数料相当額を値引として処理)
・買い手側
買掛金    1,100円 / 仕入値引  1,000円
             仮払消費税 100円(仕入対価の返還)
買掛金   98,900円 / 現預金  98,900円
振込手数料 1,000円 / 現預金   1,100円
仮払消費税   100円

・売り手側
売上値引  1,000円 / 売掛金   1,100円
仮受消費税  100円          (売上対価の返還)※
  ※本来なら返還インボイスの発行を必要とする。
現預金   98,900円 / 売掛金  98,900円

実務的には商品等、通常取引における値引き、割引き、割戻しを金額基準で返還インボイスを発行するか、否か、の判断をしなければならず、発行に関してシステムで自動判定できる取引を除けば発行義務免除に該当する場合も実務的には返還インボイスは発行されると思います。通常取引で返還インボイスを発行しなければ、債権債務の消し込みに影響が出る可能性があります。

贈与税の令和5年度改正について

贈与税の改正では、相続時精算課税制度と暦年課税における加算期間の見直しが行われる予定です。
相続財産へ加算対象となる贈与のうち、
相続時精算課税では基礎控除額が110万円、暦年課税では延長された加算期間における贈与の総額のうち100万円がそれぞれ加算不要となります。
相続時精算課税では複数の特定贈与者から贈与のあった場合、基礎控除額は110万円を各特定贈与者から贈与に応じて按分した金額が相続財産へ加算不要となります。暦年課税では、相続財産に加算不要の100万円は贈与者ごとにそれぞれ100万円まで加算不要としています。

暦年課税の改正を具体的にみると、現在相続開始前の贈与の加算期間は3年ですが、7年以内に延長されます。
改正は令和6年1月1日以後の贈与者に適用されます。
経過措置として、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に相続財産を取得した者は3年以内に取得した贈与財産、令和9年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続財産を取得した者は令和6年1月1日から相続日までに取得した贈与財産が相続申告に加算対象となります。

画像3

この加算期間が延長される令和9年1月1日から令和12年12月31日の4年間に取得した贈与財産の総額のうち、100万までは相続税の課税価額への加算が不要となります。この加算不要の100万は贈与者ごとの贈与財産から控除することができるとしています。

インボイス制度での負担軽減措置

5年度大綱にインボイス制度での負担軽減措置と登録手続きの見直しが盛り込まれ、登録申請の柔軟化が行われました。
インボイス制度に対して免税事業者がインボイス発行事業者となるのに、税負担、事務負担増に対し対応が盛り込まれました。

①納税額の負担軽減
インボイス制度の導入にあたり、免税事業者が課税事業者を選択した場合の負担軽減を図るため納税額を売上税額の2割に軽減する措置を3年間講じられました。これにより、簡易課税に比べ事務負担が大幅に軽減されます。

②中小事業者等の事務負担の軽減
事務負担の軽減案で、現在は3万未満の課税仕入及び請求書等の交付を受けなかったことについてやむを得ない理由があるときは、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨の規定があり、インボイス制度の開始後は廃止されますが、柔軟な移行ができるように新たな事務負担の軽減措置が行われました。
具体的には基準期間における課税売上高が1億円以下である事業者に対しては、施行(令和5年10月)から6年間、1万円未満の課税仕入についてインボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除を可能とされました。
基準期間における課税売上高が1億円超であったとしても、前年または前年事業年度開始の日以降が月の期間売上が5,000万以下である場合は措置の対象とすることが盛り込まれています。

暦年課税の相続時前の贈与に関して

政府税調の専門家会合で、暦年課税に関しての意見が述べられています。
毎年110万までは贈与税がかからなく、連続的に贈与を繰り返している者は多くいるでしょう。又、贈与税の申告を連年で行っている者もいます。
その連年での贈与の割合が明らかにされました。
平成27年から令和2年分の間に
29歳までの者で17%、
30歳以上59歳までの者で12%、
60歳以上の者で40%が
複数年にわたって贈与税の申告を行っています。
その中で相続財産の多い、ごく1部の者は贈与税の負担率が、相続税の負担率を下回る傾向があります。
こうした者が「財産の分割贈与を通じて、相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能」となっています。
このことから、暦年課税における相続前贈与の加算について期間を延長することが適当ではないかという意見が上がっています。
現在、相続申告前3年の贈与に関して相続財産に含めることになっています。近年、寿命が大きく延びたことにより生前贈与ができる期間が長くなっていることなどから、期間を延長することが適当ではないかとしています。

4年分年末調整について

国税庁は9月に4年分年末調整のための各種様式、4年分年末調整のしかた、4年分給与所得の源泉徴収票等の5年分源泉徴収額表などを掲載しました。
今年からエクセルで年末調整の税額計算等を行うことができる「年末調整計算シート」を提供し、ダウンロードをして利用することができる様になりました。

法定調書関係の4年分の主な改正事項としては、
①給与支払報告書の提出枚数が2枚から1枚
②成人年齢の引き下げに伴う源泉徴収票の「未成年者」欄の記載
③短期退職手当等について、退職所得の金額の計算方法の改正

5年1月からの源泉所得関係の改正事項は、
①非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件改正
②扶養控除等(異動)申告書の住民税に関する事項の改正

が挙げられています。

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